京都民医連第二中央病院広報誌 2007年4月発行 vol. 8

門祐輔院長「大文字」インタビュー

 2002年12月の院長就任から4年4ヶ月。フットワークも軽やかに、どこでも自転車に乗って登場し、気さくで話しやすい院長として奮闘中の門院長をご紹介します。

インタビュアー事務次長 坪田美也子

プロフィール
門 祐輔(もん ゆうすけ) 院長

1980年3月
京都大学医学部卒業
1980年4月
京都民医連右京病院内科
1981年5月
京都民医連北病院内科
1985年6月
国立循環器病センター内科脳血管部門
1985年12月
耳原鳳病院リハビリテーション科
1986年4月
東京大学医学部リハビリテーション部
1986年9月
埼玉医大リハビリテーション科 助手
1987年4月
京都民医連中央病院神経内科医長
右京病院リハビリテーション科兼務
1991年5月
京都民医連綾部協立病院内科医局長
1997年5月
田中診療所所長
京都民医連第二中央病院副院長
2002年12月
京都民医連第二中央病院院長・信和会理事長
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 専門医・指導責任者
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 近畿地方会幹事
  • 日本神経学会神経内科専門医
  • 日本内科学会認定内科専門医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 日本脳卒中学会評議員

Q1出身地は?

 大阪市内です。

Q2医師になろうと思ったきっかけは?

 当時はあまり深く考えずに、高校の先生のアドバイスに沿って選んだというのが、正直なところです。京大医学部へ入学してから、医療をめぐる社会的な問題について議論をしたり考えたりする機会があり、それが民医連へ来たきっかけになっています。

Q3専門分野は何ですか?

 内科、神経内科、リハビリテーション科です。

Q4これまでの経歴は?

 卒業後すぐに民医連で研修を始めました。内科の仕事をしながら、京大病院の研修生として神経内科の勉強をしました。国立循環器病センター、耳原鳳病院、東大リハビリテーション部、埼玉医大リハビリテーション科で主にリハビリテーションの勉強をした後、京都民医連中央病院で神経内科、リハビリテーションの仕事をしました。その後綾部協立病院(今の京都協立病院)で内科医として仕事をして、1997年本院が安井病院から京都民医連第二中央病院になる年から働いています。

Q5どんな医師でありたいですか?

 どんな人でもみられる医師でありたいと思っています。実際は難しいことですけれども…。患者さんと向き合う時は、その患者さんが「何を求めて受診したのか?」を考えて、その方に合った医療を提供することを大切にしたいと思っています。

Q6第二中央病院を、今後どんな病院にしていきたいですか?

 左京区は大学病院があり、専門性も高く地域医療に熱心な開業医の先生方がたくさんおられます。そうした様々な機能を持った医療機関と連携して、入院については高齢者医療、在宅医療を支える分野に力を注ぎたいと考えています。高齢の患者さんは一人で多くの病気を持っています。本院では内科を中心に各分野の専門医がいますので総合的な疾患管理ができます。また高齢者は病気を契機に心身の機能を低下させることがよくあります。病気の治療だけでなく、栄養管理や褥創予防、リハビリテーションなど退院後の生活に向けた総合的な援助が大切です。様々な職種がチームで関わることを重視していきます。

 もう一つは、地域の中に飛び込んでいく「病院らしくない病院」にしたいと思っています。

 例えば、健康づくりへの支援です。健康づくりは「一人ひとりがどう生活を変えることができるか」がポイントです。これを「行動変容」といいますが、簡単なことではありません。長時間労働で睡眠すら取れなかったり、子供の時から朝食を食べない習慣があったり、地域から孤立してひきこもりの高齢者がいたり、様々な社会問題も背景にあります。一病院だけで支援できるものは限られていますが、病院には管理栄養士をはじめ種々の資格を持った専門職がたくさんいます。来年から国の制度として健診が「義務化」されますが、地域の諸団体・個人とも協力しながら、まちづくりのひとつとして、健康づくりをもっと支援できるようにしたいと思っています。

Q7医療費負担増、格差の拡大、高齢化社会の進行など、生活や健康に対する不安が募りますが…。

 「病気になっても暮らしが大変で、病院の敷居が高い」「高すぎる国民健康保険料が払えなくて、保険証がない」などたくさんの相談が寄せられます。医療・福祉制度に対する改悪が続いていますが、様々な制度を活用しながら支援できる事例も多くあります。また、私たちの病院・法人では、無料低額診療事業(注)を行っていますから、一人で抱え込まないで相談にきてほしい、近所で困っている方があれば、声をかけてほしいと思います。

 そして、もう一つ大事なことは、やはり制度を変える、社会を変えることだと思います。「医療を守れ!」と、思想・信条を超えて、連帯の輪は広がっています。

(注)社会福祉法の第二種社会事業に基づく「生計困窮者のために、無料または低額な料金で診療を行う事業」のこと。生計が大変な患者様の受診の際に、所得等に応じて医療費の減額や免除ができるという制度。

Q8多忙な日々のようですが、元気の源・リフレッシュの秘訣は?

 走ることです。高校時代はラグビーをしていました。それ以来体を動かすことが習慣になりました。年1回は必ずフルマラソン出場を目標にしています。これまで、20数回の大会に出場しました。80Kmや100Kmを走る大会も完走しました。走るという目標を持つことで、睡眠時間を確保したり食生活に注意したりして、体調の維持・コントロールが可能になっているようです。

Q9最後に、患者様へのメッセージをお願いします。

 「かしこい患者」になってほしいと思います。

 医療は、そもそも危険な行為であり、不確実なところがあるものです。望まない結果となることもあるわけです。何でも治せる「名医」は存在しません。医療者に全てを任せていても、逆に過度な期待を抱くことも問題です。医療はあくまで医療者と患者さんの協同作業です。私たちも努力しますが、患者さん自身も、「かしこい患者」になるために、心掛けていただければと思います。

 「ささえあい医療人件センターCOML(コムル)」という団体があって、「かしこい患者になりましょう」と、『新・医者にかかる10箇条』を発表していますので、最後に紹介します。

「新・医者にかかる10箇条~あなたが“いのちの主人公・からだの責任者”」

  1. 伝えたいことはメモして準備
  2. 対話の始まりはあいさつから
  3. よりよい関係づくりはあなたにも責任が
  4. 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
  5. これからの見通しを聞きましょう
  6. その後の変化を伝える努力も
  7. 大事なことはメモをとって確認
  8. 納得できないときは何度でも質問を
  9. 医療にも不確実なことや限界がある
  10. 治療方法を決めるのはあなたです