研修が始まって

中尾 寛(京都大 04 年卒)

 僕は就職をどうしようか非常に迷いました。何を優先すべきか、何を基準にすればよいのかよく分からず、実習や受験に行きまくるのも何か億劫な所があって、結局は数ヶ所だけ受験しただけでした。どうして民医連にしたかということは、たぶん対談の中でもあったと思うし、あまり詳しくは書きません。ごく簡単に言えば、雰囲気が合いそうだったことや、縁があったということになるでしょうか。

 そういう人が多いのかどうか知りませんが、僕は医者の世界で出世したりエラくなったり自分の権勢を誇るようになったり自分だけスゴい奴になったりすることにあまり興味が持てなかったというか、何か嫌悪感がありました。僕はけっこう、一年目の今の研修先である京都民医連第二中央病院で研修したいと思っていて、色々なめぐり合わせで叶うことになったわけですが、その希望の理由を今思い返してみると、一言で言えばゴリゴリの臨床の現場で苦労したかった、ということだと思います。ゴリゴリの臨床の現場というのはつまり、たくさんの患者さんがいて、様々な意味で難しい患者さんも多々おられたりして、その中でスタッフが忙しく働き、といった普通の医療現場のことです。業績のためや出世のためでなく、まず目の前の人の為に力を尽くすような現場のことであり、そういう所で苦労しながら、そういう姿勢を医者になりたての自分の身に染み込ませたい、と思っていました。

 研修が始まって一週間少ししか経っていませんが、今のところ、良い研修をさせていただいているし、これからもできそうだと思っています。何が良いかというと、バランスが良いということだろうと思います。つまり、疾患の診断や治療の学習と手技の獲得の学習と患者さんが利用できる社会的資源などの学習等とのバランス、泥臭さとアカデミック臭さとのバランス、しんどさと楽しさとのバランス、踏ん張る所と息を抜くところとのバランス。また先輩や他のスタッフも大変親切です。と言ってもさっぱり分からないかもしれません。月並みなセリフですが、もし興味を持たれたら実習の名目でいつでも遊びに来てください。

 最後に学生生活を送る皆さんへのメッセージとして、僕はどこでも言っていますが、あまり将来の事などを気に病まず、興味のおもむくままに遊んだり勉強したりしたらいいんじゃないか、ということを書いておきます。何もする気が起こらない時はダラダラすればいいし。人間はその時が来れば自ずからやるものだし、そうでない時はできるだけ好きな事をする。この「好きな事をする」というのは簡単なようで難しく、できるようになるには経験と学習がいると僕は思っていますが、これがあるからこそ人生が豊かになると思います。ぜひ、好きな事をすることが苦手な人は、その練習をして欲しいと思っています。

> 研修医からのメッセージ・目次

実習申込み