京都民医連第二中央病院広報誌 2015年11月発行 vol.24

おいでませ外科「肛門外来」

肛門の病気 うんちは捨てられない大切な情報源

 肛門は自分ではなかなか見ることができませんが、毎日使う大事な場所であります。
 肛門の代表的な病気である「痔」は、実は成人の3人に1人が痔もち!といわれるほどにありふれた病気です。しかしながら、「おしりを人に見せるなんて恥ずかしい!」とか「命にはかかわらないし…。」と市販薬を適宜使用して症状を抑えてはまた再発し…。を繰り返し何年もお悩みの方も多くみられる様です。
 ちょっとした日常生活の工夫でウンと楽になったり、手術治療では日帰りで行える注射療法などもあり、 これからの人生をウンとハッピーにできることもあります。
 肛門の症状は出血、痛み、腫れ、かゆみ、便が下着につく、膿がでる、ポコッと飛び出るなど様々です。毎日のお体からのおたより(お便り)をささっと流さずに時には注目していただき早期発見に努めていただきたいと思います。

「肛門外来」ってどんなところ?

 肛門外来ではまず、症状や通じの状況などを詳しく問診します。それだけで診断がつくことも稀ではありません。診察はご自身では見えない場所の診察ですので不安や怖さがあると思います。症状をお聞きしながら丁寧にすすめます。痛みなど症状があれば遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。
 最後に診断と治療についてイラストを用いて説明します。まずはお薬の治療を選択される方が多いです。
 生活習慣の改善で症状がよくなる方も多いことから、なるほど!と納得してもらえる説明に努めています。

肛門外来であつかう病気

痔の御三家

いぼ痔
内痔核、外痔核、脱肛、皮膚痔、肛門ポリープ

 突然、肛門の縁が腫れて痛みを伴うものは、血栓性外痔核といっておしりの周りにできた血豆です。耐えられる痛みでしたら、ぬるめのお風呂にゆっくりつかっていたら日にち薬で治っていきます。
 痛みを伴わず、排便時に脱出する痔を脱肛といいます。肛門の奥が腫れる原因の一つに「気張りすぎ」があります。トイレに座る時間は5分以内と薦めています。脱出の軽い方、出血がうっとおしい方は、半日の治療(ジオン注射)でほとんど痛みなく治療ができます。
 脱出のきつい方でしっかり治すためには2~3泊入院の手術治療が有効です。ジオン注射と組み合わせて行うことで痛みや術後の出血を大幅に抑えることができるようになりました。

痔の御三家

切れ痔
裂肛

 おしりは消化管の出口ですが入口の唇に似て、非常にデリケートにできています。きつく拭きすぎたり、タオルで洗ったり、温水洗浄器付き便座の使いすぎは禁忌です。傷つき、ヒリヒリし、排便時に痛んだり、ティッシュに血が付いたりするようになります。急性裂肛の症状です。硬い便がでて、よく肛門が裂けてしまうような方は、慢性の裂肛になってしまいます。
 恥ずかしいからと放置しているとドンドン肛門が狭くなっていきます。便が出にくいほど狭くなった方は手術をすすめます。1泊2日の入院で手術の翌日から心地よい排便が得られます。

痔の御三家

あな痔
痔ろう

 痔ろうは、肛門のまわりの痛み、熱感、我慢し続けると膿が出るなどの症状で始まります。
 これは肛門周囲膿瘍といい、できるだけ早く受診し、膿を出してあげることが重要となります。運の悪い方はばい菌が身体中にまわり、生命に関わることがあります。肛門の痛みには要注意です。
 一旦治っても2度3度と繰り返す方には手術を勧めます。何回も繰り返していると痔ろうはがんになることがありますのでためらわず受診して下さい。(痔ろうがんではほぼ100%人工肛門の生活になります)
 痔ろうの手術は1~2泊の入院治療です。以降は外来で肛門の機能を維持することを重視しゆっくりと治療をすすめていきます。

痔以外の病気は?

排便機能疾患 便秘・便失禁・骨盤臓器脱

 当院肛門外来では便秘や便失禁、骨盤臓器脱(直腸脱など)の治療といった排便機能についても力をいれています。
 たとえば便が漏れる・下着が汚れるといった「便失禁」は実は日本でも500万人以上の方がお悩みである珍しくない病気です。便失禁のうち7割の方でお薬や運動などの保存的治療で症状が改善することがわかっています。しかし残念ながら500万人のうち4分の3の方が一度も医療機関に受診・相談されたことがないということもわかってきました。当院では最も一般的な投薬治療から最新の仙骨神経刺激療法まで対応可能です。

見つかったときは手遅れだった、をなくしたい!

大腸がん 直腸がん

 最後にお伝えしたいことがあります。「痔の症状と大腸がんの症状は非常に似ている」ということです。
 がんだから痛みが出るだろうと思いがちですが、治療が可能な大腸がんのほとんどは痛みません。早期がんといわれるものはほぼ100%痛みがないのです。
 痔だと思って排便時に出血しているのを放っておいて、病院を訪れた時には手遅れの状態、人工肛門が必要な状態という方が後を絶ちません。
 大腸がんは非常に治りやすいがんです。早期で見つかった方はカメラでの治療も可能です。
 私たちは大腸がんで命を落とすような方がいなくなるように、痔でお悩みの方に大腸がん検診を一度はうけて頂く様に勧めています。

 肛門外来は様々な肛門にまつわる疾患を専門的に扱う外来です。残念ながら当院での手術は行っていませんが、周辺の医療機関や特に京都民医連中央病院大腸肛門病センターと連携し専門的な検査・手術治療を行っています。術後は再び当院に通院していただくことも可能です。
 これからの日常生活をずっと快適に過ごしていただける可能性がありますので、恥ずかしがらずに是非一度肛門外来ののれんをくぐってください。お待ちしています。