京都民医連第二中央病院広報誌 2014年12月発行 vol.22

「コケ紅葉」 Gorou Ishikawa

今年度の当院の課題

磯野 理 京都民医連
第二中央病院
院長 磯野 理

 最近、ある大学医学部の倫理学の授業で、731部隊について知っているかどうかを尋ねたところ、2名を除いたすべての学生が知らないと答えたそうです。 知っていた2名は韓国と中国からの留学生でした。 日本の731部隊の医学者・医師は、第二次世界大戦中、満州で人道に反する医学実験を行い、ナチス・ドイツの医師による戦争犯罪と並び称される戦時下医学犯罪を犯しました。 私が医学部に入った頃、少なくとも731部隊の名前は皆知っていたと思います。なぜ今の医学生は知らないのでしょうか?  教科書に載せなくなったからです。

 しかし東京裁判では人体実験データを独占したい米国の意図により、日本の医師は戦争犯罪を免責されました。 日本の医学界は過去の事実を科学的に検証し反省する機会を失い、その責任はうやむやにされてしまったのです。 それは教科書に載せないという姿勢に通じるものです。

 来年は戦後70年を迎えます。 日本が再び加害の歴史を歩まないためにも、医学界が過去と真摯に向き合い、未来へとつながる「医の倫理」を確立するために前向きに取り組むことを願って止みません。

*このことに興味を持たれた方は、京都府保険医協会のホームページ上で 「医の倫理―過去・現在・未来―企画実行委員会~日本医学会総会2015関西にむけて~」 (略して、医の倫理実行委員会、代表 垣田さち子京都府保険医協会理事長)の催しなどをご参照下さい。