京都民医連第二中央病院広報誌 2007年9月発行 vol. 9

「秋の池」Gorou Ishikawa

医療・介護・社会保障費を増やすことが現実的課題になってきた

京都民医連第二中央病院
院長 門 祐輔

 7月29日の参議院選挙で政府与党が過半数割れになりました。「郵政民営化」だけを争点にした衆議院選挙で自民党が圧勝したのはわずか2年前なのに。年金問題が発端ではありますが、改憲手続法(国民投票法)、教育基本法改悪の強行採決、社会保障切り捨て、格差拡大、増税路線の自民・公明党政治に、国民がノーを突きつけた結果と言えます。

 同時にこの選挙は民主党の手を縛りました。「国民の生活が第一」というスローガンでたたかった手前、弱肉強食の構造改革路線は影をひそめざるをえません。医療について言えば、京都選挙区で当選した民主党議員は、京都保険医協会の「日本の医療費を対GDP比でヨーロッパ水準に引き上げることについて」のアンケートに「賛成」と明確に回答しました。この立場を変えれば、次の選挙で今の自民党と同じ運命になります。

 マスコミの論調も、医療費削減から「他の先進国に比べて圧倒的に少ない医療費を増やすべき」「医師不足の解消のために医師を増やすべき」に大きく変わりつつあります。高齢化が進む日本において、安心の拠り所である医療・介護・社会保障費を増やすことが現実的課題になってきました。多数の世論で是非実現したいものです。

 一方で、今後財源の問題がクローズアップされるでしょう。もっともらしく「消費税引き上げ」を取りざたする声もありますが、まずは空前の利益をあげている企業の法人税を元へ戻すことが先でしょう。それだけで10兆円を超える税収になります。選択は「社会保障拡大か増税か」の二者択一ではありません。庶民増税なき社会保障拡大は可能です。