京都民医連第二中央病院広報誌 2006年6月発行 vol. 6

ストップ! 医療「改悪」

 小泉内閣は医療制度改革法案―高齢者医療の窓口負担増・高齢者保険制度の新設等を今国会で強行に進めようとしています(図参照)。その政策は私たち国民の生活実態に全く反するもので病気を持ちながらも患者になれない事態に拍車をかける亊になります。

 当院の窓口に日々寄せられているたくさんの相談の中から一事例をご紹介します。

医療現場からの叫び…所持金100円に涙

――12月のある日の正午過ぎ、真っ青な顔で来院したAさん(50代男性)。早朝にあくびをした際にアゴが外れたので診て欲しいと。手には保険証の替わりに福祉事務所が発行した生活保護意見書を握りしめていた。近所の整骨院にも行ったが、無保険で所持金もないため受け付けてもらえず、時間がかなり経過する中でようやく当院にたどり着く。医師に相談するが顎の関節がはずれてから時間が経っており専門医の対応が必要との事。とにかく救急で対応してもらえる病院に送っていく事になり、いざ出発となった時、Aさんは「100円しか持っていない、どうやって帰ってきたらいいのか」と絶句。見送る職員のポケットにあった500円硬貨一枚を渡し何とか出発する事が出来た。無事顎が戻ったAさんは、この直後体調不良を訴えられ当院へ入院。現在は無事生活保護が通り通院されている。

 Aさんは仕事に就いていたが持病の悪化で退職、それから10年以上就職出来ず僅かな貯金を崩して生活してきた。独身で近くに身よりも無い。――

高齢者に重圧

窓口負担を2割 or 3割に

  • 70歳以上の現役並み所得者の3割負担は06年10月実施
  • 65~74歳の一般の2割負担は08年度実施
  • 現役並み所得者とは、夫婦世帯収入約620万円以上、単身世帯同485万円以上(08年度からは夫婦約520万円以上、単身約380万円以上)

長期入院の食費・居住費の負担増

  • 月額
  • 住民税課税者
  • 療養病床、70歳以上・多床室の場合

保険料月6千円を年金から天引き

 窓口に寄せられる相談件数がこの2年程で急増しています。最初は医療相談で伺っていてもAさんの様に今日明日の生活がかかっていたり、多額の借金を抱えていたり、家族関係が複雑だったりと病院だけでは結論が出せず行政や社会福祉資源を活用するケースが増えています。

 ――私が愚痴をこぼすと「がまんしておくれ、じきにわたしは片づくから」と父は言うのだ。まるで一寸とした用事のように…――

 「貧乏」という詩の中で、ある詩人が老いた家族との生活を綴っていた。この国では私たちの命を、まるで一寸した用事の様に容易に考え過ぎていないだろうか。

 強引に進められていく医療改悪に我慢していてはいけないのです。私たち民医連の病院は、署名などにとりくみ、あきらめずに働きかけ続けます。政治は国民の為に! みなさんもご一緒に声をあげていきましょう。

外来診療事務課長 宮園 みさお