京都民医連第二中央病院広報誌 2016年8月発行 vol.25

「ヒマワリ」 Gorou Ishikawa

認知症と地域包括ケア

磯野 理 京都民医連
第二中央病院
院長 磯野 理

 我が国の2015年の65歳以上の高齢者人口は3384万人。総人口の26.7%を占め超高齢社会に突入している。因みに、当院が位置する左京区高野圏域の高齢化率28.3%。全国平均よりやや高い。

 戦後70年に及ぶ社会構造の変化により世帯の規模は縮小し、単身または高齢夫婦の世帯が半数を占め、これまで家族が担っていた保証を得られない高齢者が増加している。さらに都市型の超高齢社会では、個人主義が徹底して、隣は何する人ぞ、民生委員の方もアパートの住人を全く把握できないことも多いという。最近催された高野圏域の地域ケア会議で、手入れをしていた植木が枯れて放置され、しばらくして様子がおかしいので家に入ると認知症が進行してゴミ屋敷状態に陥っていたことが明らかになった事例が紹介されていた。

 地域の住民同士の繋がりが希薄になる中でこのような事例を出さないように心がけていくのは並大抵のことではない。「住み慣れた地域で、誰もが尊厳のある人生を送る」ことが本来の地域包括ケアの持つ意味である。京都民医連ではそれを「人権を尊重した地域包括ケア」と呼んでいる。その実現のためには、超高齢社会の不安をいたずらに煽り、介護給付費の削減と国の負担軽減を目的に自助や互助を強調するのではなく、健康な時も、認知症や障がいを持っても、その人が望む場所で生活を続け、安らかに最期を迎えることを認め合うようなまちづくりが求められている。