京都民医連第二中央病院広報誌 2013年11月発行 vol.20

「秋の樹」 Gorou Ishikawa

国際的な信用を失う前に
-福島原発 汚染水問題について-

磯野 理 京都民医連
第二中央病院
院長 磯野 理

 福島原発の汚染水問題は我が国最大の危機であり非常事態である。9月3日付けの科学雑誌ネイチャーの論説に、Nuclear error(原子力の過失)と題して、福島原発からの汚染水漏洩問題に対する東電と政府の対応への厳しいコメントが掲載された。福島の除染は長期に渡り、技術的にも困難が多く莫大な費用がかかる。東電の対応能力を越えており、汚染水は早期から問題になっていたにもかかわらず最近になってやっと政府が乗り出したことを、遅すぎると論説は非難している。

 炉心溶融で溶けた核燃料を冷やした汚染水は1日400トンの割合で増加し、その一部はコンクリートの裂け目を通じて地下水と近隣の海水に拡がる。1000個以上のタンクに33万5000トンの汚染水が貯蔵されている。これらは浄化処理を経ているがトリチウムなどの有害放射性核種を含む。増え続ける貯蔵汚染水の最終的な処理方法も決まっていない。海洋に浸入した放射線量は明らかでなく、この放射能洩れが人間の健康、環境および食物の安全性に及ぼす影響も不明だ。急いで答えを出さねばならない。そのためにも日本は世界中の研究者に援助を求め、情報を収集・共有することを支援すべきではないか、と結んでいる。このネイチャー誌の論説からも、世界中が福島原発の汚染水問題に懸念を持って注目していることがわかる。東京オリンピックを第4の矢と言って金儲けの道具と目論む以前に、この問題に真剣に取り組まなければ国際的な信用を失う。